前回、「ピボット分析で、国勢調査データを自社マーケティングに徹底活用(pivottabe(2))」という解説をしました。そこで使用したExcelの機能は、ピボットテーブルの[クロス集計]と[フィルター]でした。
今回は、同じ国勢調査の生データをさらに活用。[ダイス分析]と[ドリルダウン]で多面的な分析をして、ピボットグラフで上司、取引先に報告するリポートとするところまでを見てみましょう。
ピボットテーブルの基本機能を覚えておくと、大量の生データを、有用なマーケティング資料に変えることができます。操作は直感的なドラッグで、間違えたり、期待通りの結果とならなければ、いつでも元のデータに立ち返ることができます。ぜひ試行錯誤を繰り返しながら「大発見!」をする楽しみを見つけてみてください。
「実数ではなく、比率です!」ダイス分析で切り口を変更
前回同様、「日本全国で展開する高年齢女性向け通信販売会社が、販売促進を強化すべき地域を抽出するためにピボット分析をする」と仮定します。
(ご自身のビジネス・フィールドにあわせて、男女・年代層などのセグメントを変えて分析してみてください。)
ピボットテーブルで、【都道府県別・総人口おおび65歳以上女性人口クロス集計表】を作ってみましたが、あまり参考になりません。なぜなら、「ターゲット(65歳以上女性)人口の多い都道府県は、総人口の多い都道府県でもある」という傾向しかつかめないからです。
それでは、「ご高齢女性へアプローチしやすい地域はどこ?」という傾向を知るためには、どうしたら良いでしょうか? ご高齢女性の【比率】を比較する必要がありますね。
ピボットテーブルのフィールドで、Σ値にあった「総人口」をはずして、替わりに「65歳以上(女性)人口(合計)」と「65歳以上(女性)人口割合(平均値)」を表示させるものとします。
このように、フィールドの項目をコロコロ変えて分析することを「ダイス分析」(サイコロ=ダイスの目のように、分析視点を変える、の意味)といいます。
都道府県別ではなく、区市町村別にドリルダウン
さらに、前回は47都道府県での比較検討でしたが、より細かく、区市町村別[1]の傾向を見てみたくなりました。「行」に「都道府県・市区町村コード」を加えることで、全都道府県、全区市町村の高齢女性人口、人口割合を比較検討できます。
実際、様々な企業におけるピボット分析で、ドリルダウンを使う場面は多く見られます。売上分析にしても、「製品(商品)別売上」や「地域別売上」を見たり、果ては「営業マン別売上」によって”スター”と”負け犬”が張り出されてしまったり、という経験はありませんか?
ここでは、[東京都内全域全区市町村]で高齢女性比率を比較し、第一優先順位のターゲットエリアを決めるところまでのリポートを作成してみましょう。
[1] 現在、東京都やNHK放送などでの行政区呼称は「区市町村」が正式な言い回しとなりましたが、総務省統計局内では、「市区町村」という言い回しを用いているため、この記事では両方を使い分けています。
ターゲットエリア抽出には【比率】が重要、とはいえ、東京都内で最も高齢女性比率が高い区市町村は奥多摩町(高齢女性人口1441人、高齢女性人口比率54.3%)です。
そこで、仮説として、(1)高齢女性人口比率が全地域平均(27%以上)、かつ高齢女性人口総数がトップ10に入る区市町村はどこか、絞り込みました。その結果、抽出された地域が【足立区】【葛飾区】【八王子市】【町田市】である、というところまでを社内説明用のグラフに仕上げます。
[ピボットテーブル分析]タブを選択した際にリボンに現れる[ピボットグラフ]→[棒グラフ]を選択すると、下記のようなのっぺりとした自動グラフが出来上がります。
これは、グラフのY軸(縦軸)が【人口総数】だけに設定されているためなので、Y軸を2軸(総数と割合の2種)参照する複合グラフに書式変更します。
[グラフの種類の変更]→[組み合わせ](2軸グラフ)とし、第2軸の表示を棒グラフから折れ線に変更すると、以下のように変わります。
社内プレゼンで、より説明しやすくするために、高齢女性人口総数TOP10の行政区について、グラフの棒色を青から赤に変えてハイライトしています。
まとめ
大量にデータがある場合には、まずピボットテーブル試行錯誤を何度でも繰り返せるから、最適解が見つけやすい!
ピボットテーブルは、普段使い慣れていないと「とっつき難い機能かも…?」と思うかもしれません。しかし、これまで説明してきたように、どこの会社でも必要となりうるような大量データの分析作業を、関数やVBAプログラミングの必要もなく、直感的に操作できる便利な機能なのです。
慣れないうちは、想定外の表示になったり、元データを壊してしまったり、ということがあるかもしれません。しかし、気軽に何度でも分析し直せるのもピボットテーブルの大きな特徴です。元データを活用して、自分がどのような方針を立てたいのかが決まったら、ぜひ臆することなく、ピボットテーブル・ボタンを押して色々な切り口から手元の数字を眺め直してください。