あなたが現在お使いのExcelには、「データ分析」のアドインが追加されていますか?
もしまだでしたら、ぜひ一度追加して、手持ちのExcelデータを統計的に分析してみると面白いですよ。
本格的に統計学の勉強をするならば、かなり難解な専門用語も覚えなければいけません。
しかし、仕事に必要なデータ解析をExcelで試みるくらいなら、見よう見まねでツール操作をするだけでも、十分な判断材料が得られる場合もあります。
今回は、統計学の知識を持たない実務者でも、データ分析アドインを使ってできることの一例をご紹介します。
なお、Excelを使い始める前に「そもそも素人が、統計学をどうやって勉強するの?」と思ったら、初心者向けに説明されている統計学入門テキストが、Web上で無料一般公開されていますので、そちらも見てみてくださいね。
KOGOLAB(早稲田大学人間科学学術院 向後研究室で実際授業に使われた教材データ)
仕事で使うパソコンに、データ分析アドインを追加
Windows版Excel2019の初期設定では、データ・タブのリボンは、以下のようになっています。
「データ分析」ボタン(コマンド)、無いですね。
そもそも「外部データの取り込み」や「入力規則」など、データ操作に関係するボタンが詰まった「データ」のタブ、普段から使い慣れていますか?
「挿入」や「ページレイアウト」「数式」などのタブは、実務でかなり頻繁(ひんぱん)に使用することでしょう。
しかし、実は「データ」タブの各ボタンについても、使い方を覚えれば、仕事に応用できる便利機能が満載ですよ。
さて、「データ分析」ボタンがなければ、
[ファイル]→[オプション]→[アドイン]をクリックして、標準で追加可能なアドイン一覧を表示してください。
[分析ツール]にチェックを入れたら[OK]。
追加されました。では、早速使ってみましょう。
「t検定」?「回帰分析」?「ヒストグラム」???
フリーズしたら、意味を調べにハンバーガーショップへGo!
仕事用データを、実際に分析ツールにかけてみましょう
統計用語を覚えることが、この記事の役割ではありません。仕事への使い方を見つけることが目的です。
ここからは、とある小規模飲食店のケースに照らし合わせて、実際に分析ツールを使ってみましょう。
コロナ禍以前は、中小飲食店では、電子マネーなど使用不可のお店が多数ありました。
しかし、「非接触」で決済できることもあり、導入を決める店舗が急増しています。
従業員3人で営業している街中華の名店「X食堂」では、まずはキッチンカーなどでも導入しやすい、QRコード決済(PayPayなど)の仕組みを使いはじめました。
しかし、お客さんからは、交通系ICカードなどの電子マネーでも支払できるようにして欲しい、という要望があります。
さて、ヨソはどうしているのだろう? 頑固店主は、慣れないパソコンと格闘しながらWebで調べはじめました。
Web上には「地域における決済情報等の利活用に係る調査」 最終報告書(総務省調べ)という資料が、Excel基礎資料と一緒に一般公開されています。
このExcelを読み込めば、全国でのQRコード決済、電子マネー決済導入状況が分かります。
読み込みました。さっぱり分かりません…(苦笑)。私ゃ、頭が悪いのかな?
いえ、全くそんなことはありません。統計的に、加工して「分析」しなければ、「傾向」は分からないのです。
そこで、仮に、X食堂と同規模の「従業員3-5人」「宿泊業・飲食サービス業」法人が、QRコード決済、電子マネー決済を導入している割合だけをExcelで抜き出しました。
(統計用語の詳細は、いまは理解しなくても良いですから)この表をドラッグして、[データ分析]→[t-検定: 一対の標本による平均の検定ツール]を選択→[OK]→「変数1の入力範囲」をQRコード決済割合、「変数2の入力範囲」を電子マネー決済割合として[OK]してみましょう。
難しい統計関数などを一切使わず、Excelが自動的に右のような分析指標リポートを作成してくれました。
一般的に、このレポートのP値が5%以下ならば、2つのデータ群に「明らかな相違がある」と判断しますが、今回の「QRコード」と「電子マネー」のアンケート結果は、P値が1(≒ほぼ100%)。
つまり、調べ方が違っても、全く同一の調査結果になっていることがわかります。
ちなみに、同じレポートの「ピアソン相関」が0.99(≒ほぼ1、ほぼ同一の調査結果)となっています(「相関」ついて知りたければ、アイスクリーム屋さんへGo!)。
同じ「データ分析」を、今度は「QRコード」と「現金決済」とでやってみると、「ピアソン相関」が-0.34(マイナスの相関)となりました。
上記のExcel操作から、街中華屋さんが得た結論は
「QRコード決済を使うお店は、ほぼ同時に電子マネー決済も導入。現金決済の多いお店は、QRコードも電子マネーも入れてない(負の相関)から、結局QRコード決済だけに対応したウチのようなお店は、非常に中途半端な存在になっている」
ということです。
「なるほどね、だからウチのお客さんからも”電子マネーを使わせて欲しい”という要望が多かったのか…」
と気づいたわけです。
まとめ
本格的なデータ分析には、統計学の勉強が必要です。しかし、簡単な傾向把握だけなら、Excelのアドインが使えます。
アドインを呼び出す時に表示される統計用語が難解なため、使うのを尻込みしてしまった人も、これまで多くいたのではないでしょうか?
しかし、ツールの使い方そのものは易しく、ツールにかけたことでExcelのブックやワークシートが壊れてしまうこともありません。
まずは、用語を知らなくても、このアドインを実際に操作してみましょう。
大切なことは、「Excelを使って、どのような事実を知りたいと思っているのか?」、つまり分析のための「仮説」を立てることです。
それさえ決まれば、あとは白か黒かをはっきりさせるだけなので、統計学の専門知識はそこまで要求されません。
ただ数字が羅列されているだけのExcelブックから、ぜひご自身で、ビジネスをよくするためのヒントをあぶり出してみてください。
※注; QRコードは、(株)デンソーウェーブの登録商標です。