
改正電子帳簿保存法(電帳法)が、2022年1月より適用されることをご存知ですか?
※2021/12//6報道より:
適用直前の省令改正により、延期、もしくは猶予期間が設けられる可能性も出ました。
決定事項ではありません。確定情報が発表され次第、アップデートします。
※2021/12/10公開の政府税制改正大綱より:
2年間の「宥恕(ゆうじょ)措置」が設けられることが決定しました。
2021年内に省令改正される予定です。
(宥恕:寛大な心で罪を許すこと(小学館デジタル大辞泉))
→つまり「電子データの紙保存は【誤り】だけれど、お目こぼししましょう」
という意味です。「猶予期間が設けられた」と解釈してよいでしょう。
(電子帳簿保存法とは?という疑問がわいたら、国税庁解説ページ「電子帳簿保存法関係」をご参照ください。)
これまでの電帳法は、税務署の事前申請を要したり、電子データの正確性を確認する方法も複雑でした。そのため、社内で経理部門がしっかり確立できている中堅〜大手企業でないと、制度を利用することが難しく、対応するメリットも見出せませんでした。
ところが、新しく運用開始となる電帳法は、要件が大幅に緩和され、中小企業や個人事業主でも取り入れるメリットが増えた一方で、この法律下で発覚した不正行為へのペナルティも強化されました。
これまで電帳法のことを「よくわからない」ですませてきた、スモールビジネスのオーナー/担当者や個人事業主も、今後は電帳法の肝を理解しておかないと、取引先との関係で困る場面が出てくるかもしれません。
ただし、現在請求書や領収書などをExcelだけでやりとりしている法人・個人が、電帳法対応のためだけに、急ごしらえで高い会計専用ソフトを導入する必要はありません。
この記事では、2022年1月に適用開始となる改正電帳法のポイントと、Excelが必要となる「検索機能の確保」について解説します。
改正電帳法4つのポイント
会社の会計帳簿(決算書類、現金出納帳や証憑書類など)は、原則紙での保存が求められます。しかし、ペーパーレス化を進めるために、電子データで保存する場合の要件を定めたものが、1998年に制定された電帳法です。

このように、帳簿・書類の「作成者が自分か、取引先か?」、「もともと紙か電子か?」などの違いにより、保存方法が細かく定義されています。
この保存要件を緩和することが、今回の法改正の趣旨です。
主な変更ポイントは、以下の4点です。
(1) 税務署長による事前承認制度の廃止
(2) スキャンデータの、タイムスタンプ要件の緩和
(3) 検索要件の緩和
(4) 電子取引の電子データ保存義務化
(1)これまで、電帳法に基づく電子保存を始めるには、3ヶ月前までに税務署への事前申請が必要でした。この制度が廃止され、会計システムやスキャナなどが準備できたら、すぐに電子保存を始めることができるようになりました。
(2)前図「帳簿書類等の保存方法」のうち、「受領」した「紙」の「スキャンデータ」について、現行法では、不正や改ざんを防止するため、「受領者が署名した上で、3日以内にタイムスタンプを付与する必要あり」とされていました。この要件が緩和され、「署名不要」「タイムスタンプ付与期限は(最長)2ヶ月」となりました。
(4)メール添付請求書なども含み、前図「帳簿書類等の保存方法」の「電子取引の取引情報」に関して、これまでは書面で保存することが容認されていました。
しかし、2022年1月からは、この「紙出力保存が廃止」され、電子保存が【義務】となりました。
さらに、法改正後に電子保存へ対応しようと考えているスモールビジネス・オーナー、個人事業主などが準備すべきこととして、(3)検索要件があります。
電帳法の検索要件とは?
「電子帳簿」と言っても、ただ電子化されていればよし、ということではありません。
売上高が1000万円を超える事業者(個人事業主を含む)は、税務署員からの問い合わせや、税務調査に対応するため、保存する電子データに「検索要件」を備えておく義務があるのです。
この「検索要件」について、経済産業省が作成した「令和3年度税制改正大綱」解説資料を見てみましょう。
この図の中の、左下

【電子取引のデータ保存義務】が、「検索要件」に関する説明です。
旧法の施行規則では、
”取引年月日、勘定科目、取引金額その他の国税関係帳簿の種類に応じた主要な記録項目(中略)を検索の条件として設定することができること。”
と規定されていますが、これが今回、「売上高1,000万円以下の事業者は不要」となる上、それを超える規模の事業者についても、ただ【日付・金額・取引先】情報が整理されていればよし、ということになりました。
※会計上の「勘定科目」などを検索キーとする資料の必要がなくなりました。
そして、この新法の「検索要件」を満たす資料として、国税庁が例示する資料がこちらです。
「検索要件の確保」とは、つまり、上図の一覧表をExcelで作成することを指します。
法令用語だけを聞くと、何やらとても面倒くさい準備をしなければならないような感覚を持ちますが、図解すれば【これだけ】のことです。
この一覧表を作成することは、「会計専用ソフトの仕事」ではなく、「Excelの仕事」ですよね?
次回、「検索要件」に関する、この管理表の運用方法について、改めてご説明します。
まとめ
現在Excelだけで会計業務を行なっているなら、電帳法対応も、Excelだけで十分です。
日ごろ、業務に追われるスモールビジネス・オーナーや個人事業主の方は、どうしても会計作業をあと回しにしてしまうかもしれません。
その上、法改正はあるし、取引先からはペーパーレスを求められるし、違反した場合の罰則も重くなるようです。
どうしましょう!!! と焦る気持ちをおさえ、まずは自社にとって必要な追加作業のことだけを、調べなおしてみましょう。
申告シーズンに入ると、【新電帳法対応は○○会計ソフトにお任せあれ】的な広告が増えますが、今までExcelだけでやってこられた企業/個人事業主が、【電帳法対応のためだけに】新たな会計専用ソフトを導入する必要はありません。
すでにお持ちの経営資源だけで、十分対応できる可能性も高いので、まずは「必要な作業」と「できること」の棚卸しからはじめてみませんか?
新しい会計制度、知らずに恐れるほど、難しい内容ではありませんよ。


