前回まで、数回にわけて改正電帳法(電子帳簿保存法)と、インボイス制度の概要について解説しました。
いずれも「経理帳票の電子保存」準備が必要となるなど、大幅な制度変更のため、もはや「手書き」、「手作業」での対応は難しくなりつつあります。
そこで、これまでは手作業で乗り切ってきていたスモールビジネス・オーナーや個人事業主も、何らかの方法で、経理業務デジタル化を検討することになるでしょう。
その際に、新たに会計専用ソフトウエア(ASP含む)の契約をすべきか、Excelなどオフィスソフトで対応すべきか、判断に迷うかもしれません。
せるワザではExcel専門のシステム開発を提供しておりますが、「経理の電子化は、絶対にExcel活用でなければならない」と断言するものではありません。
Excel活用にも、会計ソフト導入にも、メリットとデメリットがあります。
この記事では、検討前に参照すべきWebリンクを数本ご紹介した上で、これから準備する事業主、担当者がどう取り組むべきか、というポイントを例示して、締め括ります。
経理デジタル化の必要性について迷ったら
注目のデジタル経理 今後の展望 (Legal Search)
経理のデジタル化は、先行して導入を進めた大企業を中心に「2025年の崖」で問題となるレガシーシステムをどう刷新するか、がカギ。また、デジタル化に伴って、経理部門の役割は、定型作業中心から、経営層をサポートする新しい役割が求められるようになるだろう、と予測しています。
令和3年度の電子帳簿保存法「うちは関係ない」とは言えない、2つの注意点
(攻める総務 by ITmediaビジネス ※閲覧には無料会員登録、ログインが必要です)
「エビデンスの電子化」「経理業務の自動化」などが進んでいる会社では、必ず「役員レベルで、間接業務の生産性向上への理解がある人物がいる」と言います。そして、紙文化の脱却は経理マターではなく、経営マター。費用対効果の問題ではなく、経営の品質向上とスピードアップの問題なのだ、と結論づけています。
経理業務のデジタル化がもたらす成果とは?(Manegy)
見出しの内容そのままに、ずばりデジタル化の成果を、
1.業務効率化
2.コスト削減
3.コア業務への注力
4.情報漏えいリスクの軽減
5.属人化リスクの軽減
の5点にあると結論づけています。
Excelと会計ソフト、メリットとデメリットを比較した3サイト
経理のデジタル化が、避けて通れなさそうな道だ、ということは分かりました。
では、私(わが社)は、どういう選択をしたらよいか、と迷ったら、Excel or 会計ソフト、それぞれのメリットとデメリットを比較した3記事をご参照ください。
会計ソフトを導入すべき?エクセルで決算・帳簿・仕訳を行うメリットとデメリット
(経理ドリブン)
・Excelで経理業務を行うメリット
1.初期コスト、ランニングコストが安い
2.様々なPC環境で利用できる
3.担当者に合わせたカスタマイズが可能
・デメリット
1.汎用性と更新(の容易さに欠ける)
2.業務効率化とミスの防止(にやや難あり)
会計帳簿をエクセルで作成する方法を紹介!ソフトを使うべき?(ITトレンド)
・Excelで経理業務を行うメリット
1.コストが抑えられる
2.カスタマイズができる
・デメリット
1.ヒューマンエラーを起こす可能性がある
2.専門知識が必要になる
Excelは会計ソフトの代わりになる?Excelで会計帳簿を作るメリットとデメリット|2021年版(書庫のある家 ※個人ブログ)
・Excelで経理業務を行うメリット
1.お金がかからない
2.カスタマイズがしやすい
3.余計な機能を付けなくていい
4.インターネットに接続しなくても利用可能
・デメリット
1.Excelの知識が必要
2.簿記会計、税務の知識が必要
3.誤った計算をするリスクがある
4.ルール変更時に対応が必要
5.データのバックアップが必須
6.最新版がわからなくなるリスク
実は、見比べて見ると、上記3記事は、かなり似通った主張をしています。
つまり、Excelだけで経理業務のデジタル化を進めることは、「追加コストをかけずに済み、自由な書式や仕組みで設計可能」な一方で、「Excel知識の他に簿記・会計・税務の正しい知識も必要で、計上ミスなど、ヒューマンエラーを起こし易い」というリスクもあります。
こちらのサイトへお越しになる多くの方は、一般の人より深いExcelへの知識と興味を持っていらっしゃいますが、現場の経理担当者でもない限り、同時に簿記・会計・税務の正しい知識を兼ね備えている方は少ないのではないでしょうか。
結論としては、Excelと会計の両方の知識が無い場合には、「Excelだけでの経理完全デジタル化」は、ややハードルの高い道のりとなるでしょう。
経理初心者でも操作しやすい会計ソフトを導入した方が、結果的に時間とコストの節約になる場合もあります。
会計ソフトを導入しても、ほとんどの製品はExcelやCSVファイルのインポート・エクスポート機能を備えていますので、申告・納税に必要な書類以外をExcelで取り出すことに苦労はありません。
経理・会計以外の部分(たとえば製品/部品管理、労務管理など)のExcelシステムと連携が必要で、「どうしてもExcelだけで完結する経理デジタル化が必要」という場合には、ヒューマンエラーのリスクを抱えながら内製するよりは、システム設計の専門家に一度相談してみることをお勧めします。
まとめ
経理のデジタル化は待ったなし!Excelだけで無理に内製しようとせず、会計ソフトを併用したり、システム開発専門家への相談も進めましょう。
繰り返しとなりますが、どんなスモールビジネス・オーナーや個人事業主も、今後、経理デジタル化への対応は必須となります。
それは、すべての法人・個人事業主に関係する国税庁のルールが、あと2-3年で一気にデジタル・シフトするからです。
経理のデジタル化を進める時に、正しい簿記・会計・税務知識を有した担当者が不在であれば、無理にExcelだけで内製化しようとはせず、会計ソフトを導入したり、専門家へ相談してみましょう。いずれの場合も、経理デジタル化に、Excel実務レベルの知識は必須です。
まずは、「今使っているExcelだけでできること」と「Excelだけではできないこと」を整理してみるところから、経理デジタル化に取り組んでみてはいかがでしょうか?
きっと、いままで気づいてこなかった自社の課題が見えてくるはずです。