一時期、「老後2000万円問題」というワードが、新聞や週刊誌などで大きく取り上げられました。いま国会では、「資産所得倍増計画」が議論され、2024年には、NISA(少額投資非課税制度)も拡充されます。
「そろそろ投資でもしてみないとなぁ…」と、不安に思っている人もいるでしょうが、あせりは禁物です。
トーシロー(投資初心者)が、必要な知識を持たないまま投資に踏み込んでも、だまされるか、タネ銭(資金)をうしなって中断せざるをえなくなる可能性があります。
悪党でもないかぎり、「かせぐ」「ためる」「ふやす」適正なステップをふまずに、短期間で資産を大きくすることはむずかしいのです。
そこで必要となるのが、「私の人生にとって、いつまでにいくら必要になるのか?」というシミュレーション。
この分析や検討にも、Excelはとても便利です。
自分のライフプラン表をもっていますか?
あなたは、ご自身のライフプラン表をお持ちですか?
国内大手生命保険に加入済、もしくは加入を検討している人であれば、営業のおばさん(いや、失礼しました! キレイなお姉様!!)が、ミーティングに持ってきてくれることも多いでしょう。
人それぞれにちがう、「結婚」「出産」「住宅購入」「進学」「就職」「リタイア」など、お金がかかる”ライフイベント”の時期を考えて、いまの暮らし方だと、「どれくらいかせげそうか?」、「いつ、どれくらいの資金が必要になりそうか?」を予測する資料です。
この資料は、生命保険会社だけが作れるものではなく、Web上から、無料で提供されているサービスもたくさんありますので、ぜひ一度、ご自身でシミュレーションしてみるのがよいでしょう。
代表的なものをいくつかご紹介します。
自分で描く未来予想図_その場で簡単!!ライフプランシミュレーション(全国銀行協会)
せっかくライフプランを考えるなら、マイクロソフト社のテンプレートで、Excelにしてみましょう
しかし、真剣に自分の人生とお金の問題を見つめなおすならば、Webシミュレーションに頼るのではなく、Excelで自作することをおすすめします。
自作ですから、現在の家族構成や就労状況などに応じて、自由にカスタマイズすることができます。さらに、Excelなら作成履歴をずっと保存しておくことができ、何度でも見なおし、作りなおしができるのです。
マイクロソフト社も、無料で使えるとても便利なテンプレートを公開しています。
Microsoft officeトップ < officeテンプレート< ライフ マネー プラン シート
ただし、このテンプレートを上手に活用して、生命保険会社などが提供する複雑なシミュレーション同様の資料とするには、結構手間がかかりますよ。
年収などの現在価値から、10年後の上昇率(あるいは下落率)、物価の上昇率なども考え、Excel計算式を各年のセルに埋め込んでいかなければ、正確なシミュレーションとはなりません。
そこで、もっともオススメするこのテンプレートの使い方は、「現状把握」です。
普通、ライフプラン表というと、10年分、20年分、30年分を入力できるシートになっていることが多いのですが、マイクロソフト社製資料のよいところは、10年間シートの他に、1年間シートというテンプレートが含まれていることです。
以下、この1年間シートを活用して、”超ズボラさんでもなんとかなる”家計現状把握法を考えてみましょう。
PADスクレイピングの記事でもご紹介しましたが、コロナ禍以降、キャッシュレス決済の機会が大幅に増えました。キャッシュレス決済された履歴は、デジタルデータとして、「どこか」にはかならず残っているので、スマートフォンやパソコンの家計簿ソフト/アプリと連携させて、家計簿がわりに見ている人も多いでしょう。
多くの家計簿ソフトには、取り込み済みデータを一括ダウンロードできる機能がありますので、12ヶ月分を確定情報として比較できる昨年1年間分について、Excelであつかえる形式(.xlsx または .csv)でご自身のパソコンに保存しましょう。
その上で、すべての収入(履歴金額が0円より大きいもの)と、すべての支出(履歴金額が0円より小さいもの)とを1ヶ月単位で集計して、支出計と収入計の行にそれぞれ入力してみましょう。
その際、一旦、支出も収入も、費目はまったく考えなくても大丈夫です。水道光熱費だろうが、携帯代だろうが、夫の収入だろうが、妻のパート代だろうが、とにかくプラス金額は収入、マイナス金額は支出、という形で12ヶ月分の小計と年間計を出してみてください。
よほどの締まり屋さんでないかぎり、この資料を作成してみることで、
「こんなに支出が多かったのか!!」ということ、つまり「こんなに貯めづらい家計だったのか!!」という発見をすることでしょう。
普段、何気なく支出しているコンビニのカップコーヒーや、交通系ICカードを改札タッチするだけの地下鉄運賃も、デジタルデータになって、その履歴が総合計できれば、積もり積もって、「毎月これだけの出費をしていたのか」とビックリする規模にふくらみます。
その感覚を確認したら、そこからはじめて、通信費(携帯代)なのか、水道光熱費なのか、費目ごとに、見直しの可能性について深ぼりしてみればよいのです。
まずは昨年1年(12ヶ月)間、時にはマイナス(赤字)になる月もありながら、年間の家計状況がどうだったのかを把握してみましょう。
その上で、昨年1年間で貯蓄できていた額が、家族のライフイベント(子の進学、住宅購入など)と見くらべて、十分であれば言うことなし!
不十分ならば対策を、夫婦/家族全体で話し合ってみる必要があります。
昨年のことがわかれば、今年の計画も立てやすくなりますよね。
今年の計画がしっかり立てられれば、来年の予想も、なんとなくできそうな気がしませんか? “一寸先は闇”というほどでもありませんが、10年先や20年先を一気に見通すことがむずかしい世情ですから、できるかぎり短い期間での「現状把握」と「未来予測」が、実効性の上がる資産形成プランにつながりそうです。
まとめ
資産形成に悩みをお持ちですか? それならまず、Excelの1年間ライフマネープランシートで実態把握をしましょう
現在の国内成人の大多数は、学生時代に教育機関で、「金融教育」を受けた経験がない世代です。ファイナンシャルな面でも、世の中が”自助努力”、”自己責任”という風潮になりつつあるとはいえ、知らない投資活動をいきなりやってみても、うまくいく可能性は低いものです。なぜなら、投資家本人が、「いつまでに」「いくら必要とするのか」をわかっていないから。
自己分析のために、ライフプラン表はとても役立ちます。
ファイナンシャルプランの専門家に作ってもらったり、Webシミュレーションですませることもできますが、できれば一度ご自身で、マイクロソフト社が無料公開している1年間ライフマネープランシート(テンプレート)を使って、自分で作ってみてはいかがでしょうか? 自分の家計の問題点や改善ポイントが、とてもよく理解できるようになりますよ。