ビジネス・パフォーマンスを向上させるために、何が必要かを理解していますか?
そう問いかけても、簡単に答えを出せるものではありません。 ただし、たとえば商品(製品)を販売するビジネスであれば、「どれが売れ筋か?」を把握することで、パフォーマンスを大きく向上できる可能性があります。
売れ筋把握に使われるABC分析は、勘や根性にたよらずに宝の山を見つけるため、小売業のさまざまな場面で活用されています。
しかし、ABC分析の基本概念は、「パレートの法則」というマーケティング理論にもとづいているため、売れ筋把握ばかりでなく、品質(在庫)管理、得意先管理、コスト管理など、多くのビジネス課題解決に応用できます。 “分析”と聞くと、なにやらむずかしいツールを使わないといけないのかも?…と心配になるかもしれませんが、ご安心ください。かんたんなExcel関数だけで、客観的な評価をすることができますので、ぜひ一度、実際に手を動かしてABC分析表を作ってみましょう。
Excelワークシート上でのABC評価の求め方
ABC分析は「重点分析」ともよばれる分析手法のひとつで、複数データを「重要度」によりAランク、Bランク、Cランクに分類します。ランク分けの基準には、何種類かの考え方がありますが、パレートの法則(「売上の8割は、全体の2割の商品がもたらしている」、いわゆる2:8の法則)にもとづいて、
Aランク:売上累計8割までに位置するグループ
Bランク: 〃 9割まで 〃
Cランク: 〃 9割以下(のこり)のグループ
と切りわけるケースが多く見受けられます。
ランク分けの基準が決まってしまえば、VLOOKUP関数を使うだけで容易に判定できますので、以下に、サンプルデータを使って、実際に売れ筋商品の見きわめをしてみましょう。
たとえば、某中堅PCアクセサリー・メーカーで、以下の商品をあつかっているものとします。
商品ごとの販売記録は日々保存していますが、どの商品の売上構成比が高いかは、感覚的にしか語ることができません。なぜなら、販売記録から抜いたデータは、ワークシートでは、このようなシンプルなログだからです。
※注;ChatGPTを利用してダミー生成したログデータのため、実在する取引記録ではありません。
この販売記録が100レコードあり、ABC分析した結果は以下のようになりました。
元のログデータから、このABC分析表を完成させるまでの手順を、具体的にみてみましょう。
まずは、ランダムに記録されている各製品ごとの売上を、並べ替えて小計(名寄せ)します。
10製品ログ100件の合計売上高は、500,400円であることがわかりました。この可視セル(製品集計売上高)をコピーして別表とし、累積売上高と累積売上割合を計算します。
累積売上割合が大きい順から、上位80%までをAランク、90%までをBランク、それ以下をCランクと判定するため、もう1つ別表でABCランク表を作りましょう。
あとは、累積売上割合上位からのパーセンテージが、80%以下の商品を「A」、90%以下の商品を「B」、100%までの商品を「C」と判定させるように、VLOOKUP関数で別表を参照させればよいのです。
この時、1点だけ気をつけておくべきことは、VLOOKUP関数の引数です。
構文は=VLOOKUP(検索値,範囲,列番号,検索方法)となりますが、検索方法は必ず1、もしくはTRUE(近似一致)と指定してください。 0、もしくはFALSE(完全一致)を選択してしまうと、別表に記載のある数字(0%,80%,90%,100%)以外の数値が、すべて「エラー値」と判定されてしまいますのでご注意ください。
当社商品のABCランクが、判定できました!
できあがったABC表は、グラフ(パレート図)化するとさらに明快
ここまでのABC分析表ができたら、もうひと押し!
せっかくなので、自分の集計・分析結果を、まわりの同僚や上司に説明しやすくするために、グラフにしてみましょう。
製品名から累積売上割合までをドラッグして、[おすすめグラフ]→[パレート図]を選択してください。
一発でこのグラフができあがりました。
何がスター商品で、何が問題をかかえているのかが、グラフの大小から一目瞭然ですね。
「パレート図」の”パレート”は、「パレートの法則」(2:8の法則)と同義で、”何が全体の8割をしめる売上・利益・コストを構成しているのか”を見つけだすためのグラフです。このように図解にしてみることで、単なる数字の羅列よりも具体的に、どの項目を重視すべきか、方針を立てやすくなるのです。
まとめ
基本的なABC分析に専用ツールは要りません!VLOOKUPとパレート図で、我が社のスター商品を見つけましょう
この手順で作成したABC分析表は、単純に「累積売上割合」だけを指標としているため、精度はそれほど高くありません。
※たとえば、特売や天候、その他の売上変動要因を、このExcel表から推測することはむずかしいですよね。
しかし、おおまかに注力ポイントを見つけるには、よい手がかりとなる分析手法です。これまでワークシート上で情報整理してみたように、専用の分析ツールは必要ありませんので、まずはデータ並べ替え+VLOOKUP関数で、気になるジャンルのABC分析に取り組んでみると、”新しい気づき”がえられるかもしれません。
そして、”新しい気づき”がえられたなら、それをパレート図化してみてください。
「単なる自分の思い込み」をこえて、周囲の人との情報共有が、とてもやりやすくなりますよ。