ニンジャ?
なんか、とても怪しそう…
世間一般からみて「華やかそう」、あるいは「怪しそう(?)」にも見える外資系金融機関で、著者は社内の同僚から、「ニンジャ」というあだ名をつけられていました。
どれだけ怪しいんだろう?…とドキドキしながら本書を読みはじめましたが、書かれていることは極めてシンプルで、実用的なことばかりでした。
外資系金融機関やコンサルティング・ファームに在籍する人でなくとも役立つ内容を多く含む1冊なので、年末年始やお盆休暇などに、「いつもとちがう(!?)Excelお作法本」として読んでみると面白いですよ。
今回は、2024年4月に出版された「外資系金融のExcel作成術: 表の見せ方&財務モデルの組み方」(慎泰俊 著/東洋経済新報社 刊)という書籍をご紹介します。
ニンジャ流のExcel表作成術とは?
世界最大手金融機関の1社であるモルガン・スタンレー社で、著者はニューヨーク本社スタッフから「Excelニンジャ」と呼ばれていたそうです。そして、
退職後も同社でExcelテンプレートとして使われ続ける資料を残した著者が、本書第1部第1章で語るのは、「見やすいExcelの表を作る」ということ。
「え? それだけ?」と、肩すかしをくらったような気分になるかもしれませんが、その重要性は、本書を読みすすめるとよくわかります。
具体的にどうすれば見やすくなるのか?というお作法は、直接本書にあたっていただくこととして、求められるテクニックは”忍法”や”魔法”ではありません。
「適切なフォントを選ぶ」「セル結合をしない」「フォント・サイズを統一する」など、各要件自体は、どこの職場でも言われるような、とても基本的な操作方法のつみかさねなのです。
そう考えると、いかに日頃の資料作成が、「基本に忠実でない」作業となっているか、反省させられますね。
外資系金融機関の財務モデル、原点は家計簿にあったのか!
第2部のテーマは、「財務モデルの組み方」。急に専門的な話題になるかも?と、ビビるかもしれませんが、あわてないでください。
金融機関やコンサルティング・ファーム、企業財務に関わる人以外のせるワザ読者は、まず本書第2部第3章「初心者のためのモデル作成入門」に目を通してみることをオススメします。
「あ、企業財務モデル作りの源流は、家計簿づくりのことだったんだ!」ということに、改めて気づかされます。それに、実際に手を動かしてご自身の家計モデルを作ってみることで、財務モデル作りの訓練と我が家の家計改善と、両方いっぺんにできてしまいますからね。
もちろん、実際に企業分析に活用するための財務モデルでは、作り方は家計モデルほど易しくないですが、上記の複雑な財務モデル図も、要素をひとつずつバラしていけば、各パートは家計モデルと同様の、「フロー」と「ストック」の足し引きを重ねたものなのです。
その意味で、一見華やかそうな業界の、スーパーエリートと目される人々が行うExcel操作も、けっして忍法・魔法ではなく、地味な基本テクニックの積み重ねであることがわかります。
まとめ;外資系投資銀行もプライベート・エクイティ・ファンドも、基本の積み上げで成果をあげているらしい…ご自身の業務スタイル見直しに、本書を一読してみてはいかがですか?
自分が属する環境と異なる世界には、きっと何かすごい魔法がかくされているんじゃないか? と、つい期待してしまいますよね。本書タイトルの「外資系金融の…」という冠は、まさに読者のそういう心理をくすぐるネーミングです。
しかし、外資系金融で大きな実績をあげてきた著者が説くことは、Excelの基本機能を、何度も手を動かして徹底的に使いこなせるよう訓練すること。忍法でも魔法でもなく、多くの成功者に欠かせない要件を、地道にこなしてきた努力にあるのです。特別なテクニックを必要としない、ということは、逆に私たちにも勇気を与えてくれませんか?
もし、Excelを使った日常の業務資料作成に迷いや疑問点があれば、一度本書を通読してみると、ご自身なりの悟りが得られるかもしれませんよ?
目指せ! セカンドExcelニンジャ!?