

「ファイナンシャル・プラン」というと、貯めたり、投資したりすることを想像しがちですが、物価高が続く現代を生き抜くには、「お金の使い方」にも賢くなる必要があります。
しかも、現金出費より”支払いの(心の)痛み”を感じにくいキャッシュレス決済やクレジット精算が、コロナ禍以降にますます普及しました。支出費目に気をつけておかないと、すぐにお金を使いすぎて、収入をオーバーしてしまいますよね。
マネーの達人といわれるコラムニストやコメンテーターがよく言うのが、「お金を貯めたいと思ったら、リボ払いを使っちゃだめですよ」というセリフ。一度や二度は聞いたことのある人も多いでしょうが、なぜリボはだめなんでしょう。疑問に思ったら、Excelワークシートに関数式を入れてみてください。”怖〜いシミュレーション”が、あっという間に完成します。
リボ払いとは? 支払い方法の基本的な仕組み
英単語で回転(revolving)を意味する「リボルビング払い(略してリボ払い)」とは、クレジットカード支払い方法の一つで、毎月一定額(または一定率)を払っていく方式です。通常、クレジットカードを利用した場合は、翌月や2回・3回などの分割で、全額を決められた期間内に支払いますが、リボ払いでは、利用金額に関わらず、毎月の支払い額が一定になります。
利用者にとっては「支払い額が一定なので、家計の予算管理がしやすい」とか、「(初回契約時にリボ設定すれば、以後自動的にリボ払いになるサービスも多く)買い物のたびに支払い方法を選択する手間がはぶける」などのメリットがあります。
一方、利用者にとってリボ払いには、以下のようなデメリットがあります。
1. 金利負担が大きい
2. 支払い期間が長期化しやすい
3. 借金意識が薄れやすい
4. 複数のリボ払いで、管理が難しくなる 特にこの記事では、1.と2.に注目して、「どのくらい金利負担が大きいのか?」「支払いがどのくらい長期化するのか?」をExcelワークシート上で試算してみました。
1万円をリボ払い(月3,000円支払い)したら、支払い回数は4回、総支払い額10,283円
まず、「税込1万円の商品をリボ払いで購入して、月々3,000円ずつ支払ったら、支払い回数と総支払い額はいくらになるか?」というシミュレーションを作成してみました。結果は、下図の通り、「支払い回数4回、総支払い額は10,283円」でした。


この表では、セルB10に
=IF(B9-D9<0,0,B9-D9)
※もし支払残高ー前回元本支払い額が0より小さければ0、それ以外は前回支払い残高ー元本支払額
セルD10に
=IFS(B10=0,0,B10<D9,B10+C10,TRUE,$C$2-C10)
※もし支払残高が0なら0、
支払い残高が前回元本支払い額より低ければ、支払い残高+利息、
それ以外は、あらかじめ決められた月々支払い額(セル$C$2)ー利息
という計算式を入れて、50行から100行程度ドラッグしています。
さて、10,000円を借りて、支払い回数4回、総支払い額が10,283円なら、実質年率が15%程度と高めな割には、思ったほど長期ではないし、総支払い額も、法外ではなさそうですね。
キモは、右肩(上図ではセルD2)の支払い比率で、この比率が高いほど支払い回数は減り、総支払い額も低くおさえられます。
しかし、リボ払いの決済が、2〜3回程度の支払いで完済しづらい高額商品の購入によく用いられることを考えれば、上図シミュレーションは、少し楽観的すぎるようです。
10万円をリボ払い(月5,000円支払い)したら、支払い回数は24回、総支払い額115,795円
次に、もう少しリアルな返済計画を作成してみましょう。
10万円の商品を購入して、月々5,000円ずつ支払うリボ払いの契約をした時、完済までの期間と総支払い額はどうなるでしょうか?


支払い回数は24回で、総支払い額は115,795円となりました。支払いサイクルが月1回だとすると、支払い終えるまでに2年かかり、現金一括で商品購入をするより、15,795円も余計な手数料を支払うことになります。このシミュレーション時の支払い比率は5%でした。


これが、いわゆる「リボ地獄」50万円をリボ払い(月5,000円支払い)にすると、月々に支払う手数料すらまかなえなくなります
前章の表で、購入金額を10万円から50万円(支払い比率1.0%)にするとどうなるでしょうか?


いくら払っても月々の手数料さえまかなえず、支払い残高がどんどんふくらんでいく、「地獄の無限ループ」が始まります。実際には、手数料にも満たない少額の支払いを認める金融機関はありませんが、リボ払いのもう1つの特徴が「リボ(回転)」=購入がくり返されることにあります。
物欲にかられて、リボルビング・ライフル(回転式拳銃)のように、次々と支払い残高を増やす物品購入をくり返したら、あっという間にこの支払い無限ループにはまる可能性があります。その恐ろしい末路が、この簡単なワークシート1つで、よく理解できるのではないでしょうか?
まとめ:リボ払いのシミュレーションはExcelで簡単にできます
リボ払いのご利用はくれぐれも計画的に!
以上、リボ払いの支払いが難しくなってしまいがちな原因を、Excel関数からカンタンにシミュレーションしてみました。マネーの達人たちが、「リボはやめときましょう」と勧める理由が、ご理解いただけたでしょうか?
本文中の解説で実際にご紹介したExcel関数は、どれも基本的な使い方ばかりですので、5分や10分あれば、同じシミュレーション・シートをご自身のパソコンで再現することができるでしょう。 本記事の目的は、ファイナンシャル・プランの立て方とは無関係なので、「リボはやめましょう」と言い切るものではありません。



ただし、もしリボ払いを使うならば、Excelできちんと支払いのシミュレーションをしてから、計画的に利用することを強くおすすめしますよ。リボ地獄の無限ループにおちいらないようにするために…。





