

フールプルーフという単語をご存知でしょうか?
直訳すれば、愚か者(Fool)に耐える(Proof)となりますが、たとえば、「ドアを閉めないと動かない電子レンジ」や、「ブレーキを踏まないと通電できない自動車の機構」、「片方の向きにしかさせないUSB端子」のような設計のことを指します。
とはいえ、使用者が”愚か者(Fool)でも”って、あまり気持ちよい言葉ではないですよね。
日本語には、同義のかわいらしい単語があり、海外に逆輸出されたりしています。
トヨタ自動車の工場で採用されている”カンバン方式”のヒューマン・エラー防止策は、ポカヨケ(”ポカミスを避(よ)ける”)と言われ、海外の工場生産ラインでもPOKAYOKEで通じてしまう場合があります。
生成AIチャットの業務活用や、自動運転車の普及などが進まない理由の1つには、まだこの”ポカヨケ”が完全に保証されていないから、という点があります。
さて、話をExcelに戻します。
Excelは、資料作成の自由度が非常に高い、すぐれたソフトウエアですが、しばしば「業務使用に適さない」と評価をするビジネス・パーソンもいます。
なぜでしょうか?
1つには、業務が属人化してしまい、ポカヨケしづらいから、という理由もあるのではないでしょうか?
仕事なら、ポカヨケ撲滅を目指すのは当たり前。「Excelではポカヨケをしづらい」と考えるのではなく、「Excelでポカヨケ資料を設計するにはどうしたらよいか?」を考えるのがプロフェッショナル仕事人では?
今回は、とても地味ながら、強力なポカヨケ策のサポーターになりうる、ISNA関数についてご紹介します。
ISNAは、LOOKUP/MATCHやIFなどとセットで使用すると便利な関数です
ISNA関数の基本構文は、
となり、たとえば =ISNA(A4)という関数式を入力した時、セルA4が #N/AエラーであればTRUEを、そうでなければFALSEを返します。


だから何?
実務上、ただExcelの#N/Aエラーだけをひたすら見つけ続ける業務というのは、あまり想像できないですよね。それでは、#N/A(値が無い)エラーを見つけ出す必要にせまられるのは、いつでしょうか?
すぐに思いつく人もいるでしょう。
そう!膨大なデータベースから、必要な情報を抽出する時です。
つまり、ISNA関数は、それ自体のみで使用されることは少なく、XLOOKUP(VLOOKUP)やMATCHなどの検索関数、IFなどの条件分岐関数とセットで用いられるのがほとんどです。
以下、ごく簡単なVLOOKUPの検索式を書いてみました。


製品ID番号を検索キーにして、上の表(実際には他所に保存されているであろう製品単価マスタ)から、各製品IDに該当する製品名を抽出します。
「25」のように、明らかに製品名が存在していないマスタ・データについては、#N/Aエラーが返されますが、下の表4行目/5行目の「10」には、「スマートフォン」という製品名が当てらているのに、なぜか#N/Aです。
これも”Excel新人事務員さんあるある”のポカですね。
VLOOKUP関数の第2引数(参照範囲)を”絶対参照($)”で固定しなかったため、下へ数式をコピーしたら、参照範囲がズレてしまった”要ポカヨケ・ポイント”なんです。


VLOOKUPやXLOOKUPのExcelデータベースで、#N/Aに構わず、勇敢に続きの作業を進めてしまうのが新人さん。仕事のプロフェッショナルなら、#N/Aエラーが出た瞬間に、その理由をしっかり考え、”愚か者にも!?”ちゃんと理解してもらえるように、ポカヨケ策を練っておくものではないでしょうか。
このケースの場合でしたら、ISNAとIF関数を組み合わせ、
とし、さらに”製品ID無し”と表示されたセルのみ、条件付き書式で赤地赤太文字などでアラート表示してみてはいかがでしょうか?


もちろん、製品単価マスタの参照範囲を固定(絶対参照($))にしておくことも、忘れないでくださいね。
#N/Aエラー以外のエラー抽出には、他のIS関数ブラザーズもフル活用
このように便利なISNA関数でも、見つけられないエラーがあります。
たとえば、前章のサンプルで、1件だけ関数記述ミスのセルを作ってみましょうか。


うっかりVLOOKUPをVLOKUPとつづってしまった!
でも、ISNA関数は「値が無い」と判定しません。なぜなら、ISNA関数が見つけ出すエラーの種類は #N/Aエラーに限られるからです。
Microsoft Excelを操作中に出現するエラーには、代表的なものだけでも「#N/A」の他に「#REF!」「#VALUE!」「#NAME?」「#NUM!」など様々な種類があります(もちろん、すべてのエラーで、意味・内容が異なります)。これらすべてのエラーをはじき出したければ、ISNAの代わりにISERRORという別関数を使えば解決します。
もし「特定のエラーだけを選別してはじき出したい」という業務上のニーズがあれば、IS関数ブラザーズの他の関数をひっぱってくるようにしましょう。Microsoft公式サポートページの「IS 関数」の項目だけでも、Excel内のあらゆるエラーを特定しようとする様々な派生系関数が存在していますので。
<IS関数ブラザーズ一覧> ※公式サポートページより転載
- ISBLANK(テストの対象)
- ISERR(テストの対象)
- ISERROR(テストの対象)
- ISEVEN(value)
- ISLOGICAL(テストの対象)
- ISNA(テストの対象)
- ISNONTEXT(テストの対象)
- ISNUMBER(テストの対象)
- ISODD(value)
- ISREF(テストの対象)
- ISTEXT(テストの対象)
まとめ;プロの仕事人なら、同僚と共有するExcelブックは、ISNAほか”IS関数ブラザーズ”を使ってポカヨケしておきましょう!!
本記事に関心をもってくださった読者の方なら、おそらくExcel新人事務員さんではなくて、それなりのプロ意識をもった仕事人でいらっしゃることでしょう。
ならば、ご自身の過去の「やらかし」から考えても、ポカヨケの重要性についてはご理解いただけるのではないでしょうか。



ISNA関数をはじめとするIS関数ブラザーズは、単独で使用されることはとても少なく、地味な関数でありながら、トラブルなく仕事を回す上で非常に重要な働きをするものです。
ぜひ、このような”小ワザ”をしっかりExcelブックに埋め込んで、プロならではの資料作りにまい進してください!!














