

ChatGPTやCopilotをはじめとする「生成AI」は、サービスの種類が爆発的に増え、業務へ活用されることも今では普通になりつつあります。
ところで、最近はWebサイトやニュースなどで、「AIエージェント」という単語を聞く機会も増えましたが、「生成AI(Generative AI)」と「AIエージェント(AI Agent)」のちがいを、あなたはくわしく説明することができますか?
さまざまな解釈の仕方がありますが、ごく簡単に切り分けると、「指示(プロンプト)に反応して、受動的に回答や解決策を生成する(Generate)」のが「生成AI」で、「特定の目的を達成するため、自律的に意思決定〜行動を起こすことができる」AIシステムのことを、AIエージェントといいます。
Agentには、「代理人」「代理店」という意味がありますから、AI エージェントは、「あなたのかわりに動くAI」だと理解してもよいでしょう。
そしてMicrosoft Excelにも、早ければ2025年12月以降、この”エージェント・モード”が正式機能として搭載されます。
Agent mode in Excel generally available soon (formerly part of the Frontier program)
Agent Mode in Excel: Build and Edit Spreadsheets with Copilot
おそらく、ビジネス・ユーザー向けのMicrosoft 365 Copilot(有料AIサービス)に搭載されるようです(*)が、この”エージェント・モード”がどのようなものか? 実は正式サービス開始前でも、無料でお試ししてみることができるチャネルがあります。
それが、前回ご紹介した”Microsoft社の部活動(!?)” Garage ProjectのExcel labsアドインなのです。
Excel labsアドインのサイドペイン(右サイドウインドウ)を開くと、
-Advanced formula environment
-LABS.GENERATIVEAI function
-Python editor
などのメニュー最上段に、
-Agent mode (Frontier)
というメニューが現れます。
ここでいうFrontierとは、Microsoft社の最新AIイノベーションについて、正式リリース前に内容確認・試用できるプログラムののことで、実際2025年12月以降に有料サービスが始まるであろうAgent Modeも試せますから、ぜひアクセスしてみてください。
「エージェント・モード」は、あなたの仕事の代理店
「※※※を作って」という指示だけで、AIが自発的に資料作りを始めます
たとえば、もっともシンプルな例として、Excel請求書テンプレートを作成するタスクを想定してみましょう。
「生成AI」であるCopilot Chat やChatGPT Chatを使って、Excel請求書テンプレートを作る場合、「そもそも請求書にはどのような明細項目が必要か?」とか、「弊社は消費税小数点以下切り捨て主義を取っているが、それをExcel関数で正しく計算するには、どの関数を用いるべきか?」など、問題解決のための問い合わせを、何度もつみ重ねていく必要があります。
それでは、「エージェント・モード」にExcel請求書テンプレートを作らせると、どうなるでしょうか?
指示窓に、「請求書のExcelテンプレートを作成して」という一文だけ入力して、実行した結果が以下の動画です(実際には、回答終了まで193秒かかっていますので、約30秒に早送りしています)。
しかも、ただExcelワークシートを自動的に操作しただけでなく、どのような背景、計算式でこのテンプレートを組み上げたのかという、実に詳細な解説が付されています。
〔解説の冒頭部(実際は、数式含めこの倍以上のバイト数が解説に費やされています)〕
完了しました!
– 請求書テンプレートをSheet1に作成しました(和英併記の見出しつき)
– 明細表 InvoiceItems(A13:H18、5行のサンプル入り)を作成し、自動計算(小計・税額・税込合計)を設定
– 合計欄(G20:H22)を追加:小計 ¥37,400 / 税額 ¥3,740 / 合計 ¥41,140
– 発行元・請求先・請求書番号・発行日(今日の自動入力)・支払期日・通貨、振込先、備考欄を配置
使い方(かんたん)
– 「(入力)」と表示されている欄に情報を入力してください
– 明細表では「品目 / 数量 / 単価 / 税率(0/8/10%のドロップダウン)」を入力すると税額・小計・税込合計が自動計算されます
– 明細行は行を追加すれば自動で計算・合計に反映されます(テーブル名:InvoiceItems)
作成内容(概要)
– ヘッダー:請求書 / INVOICE(中央配置)
– 右:請求書番号・発行日(TODAY())・支払期日・通貨
– 中央:明細表(InvoiceItems)
– 下部右:小計/消費税/合計(テーブル列参照のSUMで連動)
– 下部左:振込先(銀行名/支店名/口座種別/口座番号/口座名義)+備考欄
数式の考え方(明細表)
– 合計欄はテーブル列に対する `SUM()` で動的集計
前提
– 「通貨」は JPY (¥) を想定
– 初期サンプルの税率は10%で入力(列は0/8/10%から選択可能)
– 表示形式:円表示(#,##0)、税率は%表示
– 印影やロゴ、印刷設定は未設定(ご希望があれば追加します)
目的
誰でもすぐ使える請求書テンプレートを作成し、明細入力だけで税込合計を自動計算できるようにしました。
いかがでしょうか?
従来のCopilot(ほか各種「生成AI」サービス)が1回限りの質問〜応答と簡単な関数作成にとどまっていたのに対して、「エージェント」は、ユーザーであるあなたの指示(自然言語)の内容を理解し、複数の手順や工程を含む複雑なタスクでさえ、自律的に計画・実行・検証・修正してくれるのが最大の特徴です。
テンプレートの作成以外にも、たとえばこの代理店(エージェント)は、あなたのこんな仕事を手伝ってくれるのではないでしょうか?
「この売上を分析して、トレンドを視覚化して。」
「ローン計算機を作って。月々の支払いを計算して、元金と利息と残高のスケジュール表も作成して。」
「財務月次の集計表を作成して。」などなど…
ためしに、IR資料としてWeb上に一般公開されている次の損益計算書から、トレンド分析のグラフを作るところまでをエージェントに手伝ってもらいました。


※某上場企業のIRサイトで一般公開されている損益計算書データです
スクレイピング(ロボットによる自動クロール情報収集)防止制御のかかったサイトの場合、Excelエージェントがテンプレートだけを先に生成して、ユーザーに対し「お願い;該当の箇所をWebサイトから手動コピーし、テンプレートの所定位置にペーストしてください。」と逆指示が出るほどの、芸の細かさです。
2〜3度のやりとりをへて、トレンド・グラフの生成までをExcelエージェントにすべてやってもらいました(この動画も、やはりエージェントからの回答を得るまでには数分かかっていますので、早送りで録画しました)。
まとめ;まもなく商用サービスされるExcelの「エージェント・モード」、どれだけ役にたつか!? まずは無料で資料作成させてみませんか?
忙しいビジネス・パーソンがAIと向き合う時、それは別にパソコンに向かって遊んでいるわけではありません。
(あ、時には生成AIで恋占いや手相占いの息抜きをすることもあるでしょうけど…)
「業務効率化をAIに相談だ!」という使い道が多いでしょうから、必然的に上述の「エージェント・モード」的なAI活用場面が、今後増えることが予想されます。
いつまで”Frontier Program”として無償提供されるかは分かりませんが、いま(本原稿作成時点)では無料でこの「Excelエージェント・モード」が試せますから、実際にふれ、指示(プロンプト)を投げてみて、利便性をご自身で直接試してみてはいかがでしょうか?



現状、「生成AI」サービスにしても、「AIエージェント」機能にしても、無償で得られる成果物は質・量ともに限界がありますが、将来的に「サブスク契約をするかどうか?」判断をするための”無料おためし”、と割り切って使うくらいが、Frontier Programである「エージェント・モード」との、良い付き合い方なのかもしれませんね。














