今回は、非定量データ(定性データ)を、Excel相関分析によって販促資料とするまでの過程について、ダミーデータを使って説明します。
品質がおなじで、値段が安くなれば、通常は売上が伸びます。
その商品を「ほしい」と思っていたお客さまが、まとめ買いすることも予想されるからです。
その関係は、POSや売上速報データと、価格情報との相関を調べればわかります。
しかし、価格や売上など、数値の大小で比較できる”定量データ”でなくても、相関分析によって戦略策定に役立つマーケティング情報があることを、ご存じでしょうか?
たとえば、「商品のどこが気に入ったのか」「パッケージは使いやすいか」など、消費行動の”深さ”をはかる”定性データ”。明確な数値データでなくとも、顧客アンケートなどを活用して擬似数値データ化すれば、相関分析の対象になります。
相関係数で、データ関係性の強弱をはかれます
相関とは、一方の変数が増加したとき、もう一方が増加、もしくは減少する関係のことをさします。
片方が変化したとき、もう片方の数値も同様に変化する(片方が増加すれば、もう片方も増加するなど)場合は”正の相関”、もう片方の数値が反対に変化する(片方が増加すれば、もう片方は減少する)場合は”負の相関”と言われます。
片方が変化しても、もう片方の数値に決まった変化がない場合を、”無相関”と言います。
この相関関係の強さを指標化したものが”相関係数”で、-1から+1の間で表します。”正の相関”の最大値が+1(2種データがまったく同一)で、数値が高いほど強い関係性を示します。相関係数0が”無相関”をあらわし、-1が”負の相関”の最大値(2種データが真逆)となります。
調査領域やデータ標本数により、関係性を判定する基準は一律に決められませんが、
一般的には、
相関係数 関連性の強さ
0.0-0.2 ほとんど関連性なし
0.2-0.4 やや関連性あり
0.4-0.7 関連性あり
0.7-0.9 強い関連性あり
0.9-1.0 きわめて強い関連性あり
のように判定できます。
それでは、具体的に、この相関係数をつかって、関係性分析をしてみましょう。
数字として見えない顧客満足度を、指数化して相関分析
たとえば、商店などが実施する各種アンケート。
本シリーズ”せるワザ”でも、過去にMicrosoft Forms + Excelを活用したアンケート調査シート作成の事例をご紹介しました。とある商店が、お客さまに満足度をたずねる調査シートでしたが、このアンケート回答を実際に回収したと想定して、分析してみましょう。
以下10項目の質問ごとに、自店に対する印象を、0-10ポイントで評価してもらいました。
- 総合満足度
- ご来店時の声かけ・ご案内
- 言葉づかい
- 身だしなみ
- お客さまのご要望についての理解度
- 説明やご質問に対する回答の的確さ
- お客さまに寄り添った親身な対応
- 会計や手続きにかかる時間
- お客さまが欲しい商品の品ぞろえ
- 店内の清潔さ
この質問に対して、お客さまからの回答をまとめた結果が、以下のExcel表です。
※注;ここで使用している評価(0-10ポイント)の数字は、乱数メーカーを用いて自動生成されたもダミーデータです。そのため実際には、この数値をいくら深く分析しても、無相関の要素がほとんど、という結果になります。ここでは、類似する実データを集めた時に、確認すべきポイントのみ解説致します。
まず、店主(マネージャー)が一番気にする項目は、「総合満足度」でしょう。個別にみれば、10ポイントも0ポイントもありますが、平均すれば5.8(約6)ポイントですから、全体的な評価としては、「中よりやや上」程度、ということでしょうか?
ただし、「総合満足度」だけで、なにか次の重点施策を見つけられるものでもありません。現場としては、「実際には、どういう項目が高く評価されて、お店の満足度につながるのかを知りたい」と思うでしょう。
その際には、ぜひ「総合満足度←→個別要素」間の”相関分析”を実施してみましょう。
Excelでの手順は簡単です。
まず、データ・タブの”データ分析”ダイアログボックスの中から、分析ツール”相関”を選択して、OKをクリックします。
“相関”ダイアログボックス上で、相関分析を行いたい表の範囲と、出力先(出力オプション)を指定します。今回は、表の”行方向”に並べたアンケート調査項目間での相関分析を行いたいので、”データ方向”は「行」を選択します。
この分析ツールを実行すると、指定された出力先へ、このような表が生成されます。
X軸とY軸とで、同一要素の場合を係数1とする、相関係数一覧表です。
この表で、注目すべきは、1列目、”総合満足度”と、その他調査項目との間の相関係数です。 ためしに、1列目について0以上(正の相関あり)の項目セルに色をつけてみましょうか。
このように、総合満足度に対して正の相関関係にある(良い影響を及ぼす)項目は、
・ご来店時の声かけ・ご案内
・お客さまのご要望についての理解度
・会計や手続きにかかる時間
の3項目で、特に「ご来店時の声かけ・ご案内」と「総合満足度」との係数が、高めに出ました。つまり、この項目(「ご来店時の声かけ・ご案内」)で高評価を得られると、高い総合満足度をマークするお客さまが多い、ということがわかり、アンケート結果に基づいて、スタッフ・ミーティングで、”改善ポイント”として議論することになりました。
※注;繰り返しになりますが、ここではExcel相関分析手順ご説明のためにダミーデータを用いており、乱数のため、本来はすべて「無相関」です。業務に関わりのあるアンケート実データを、上記の要領でExcel相関分析にかけてみれば「関係がある」「関係がない」が、相関係数高低ではっきりあらわれますので、ぜひ業務に即した実データで試してみることをおすすめします。
まとめ
Excel相関分析は、定性データ分析にも役立ちます
もしアンケートをとったら、それをとことん業務改善につなげましょう
成績の優劣をつけるには、数字を比較するのが一番です。
どちらが高得点か、誰の目にも明らかですからね。
しかし、数字になっていないサービスや環境については、Excelでどのように評価しますか?
今回、1つの例として”アンケート+相関分析”という事例をご紹介しましたが、たとえ主観的な評価であっても、指数化してしまえば、別の要因との関係性(相関分析)の対象として、数値データと同じように扱えるようになるのです。
これまでにも、仕事やその他公共の場面で、さまざまなアンケートに回答し、また、自分でもアンケートを作成したことと思います。もし今度、自分でアンケートを作成する機会がでた場合には、ぜひ、その先の「集計・分析」のことまで考えて、非定量データを指数化できるように工夫してみてください。
指数化することによって、「サービス」や「顧客満足」という、目に見えないベネフィットが、Excel相関分析を通じて”目に見える”お宝データに変身しますから!